建御名方神(タケミナカタ)は、国譲りを迫る建御雷神に力勝負で敗れ、諏訪へ追いつめられてしまう国津神です。諏訪大社の祭神として知られています。建御名方富命、御名方富命、南方刀美神、武南方神、お諏訪様などとも記されます。
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建御名方神(タケミナカタ)とは
古事記の国譲り神話に登場する神で、大国主神(オオクニヌシ)の御子です。
建御名方神(タケミナカタ)の神名の由来
神名のミナカタは本来「水(み)ナ方(かた)」または「水潟(みなかた)」であり、鎮座地が諏訪であることから、諏訪湖の水神との説があります。水を支配するがゆえに農耕神であると同時に、山々に囲まれた諏訪では、狩猟神の性格も色濃く帯びています。
歴史的には、諏訪信仰の拡大とともに、武神として武士層の崇敬を大いに集めました。
国譲り神話と建御名方神(タケミナカタ)
国譲り神話でははじめ、出雲を統治する大国主神に対して、高天原にすまう天孫から葦原中国(あしはらのなかつくに)に対して譲渡を迫る使者が二度にわたって遣わされます。しかし、いずれも失敗に終わります。
三度目の使者に立ったのが建御雷神(タケミカヅチ)で、大国主に対して威圧的に葦原中国の譲渡を要求します。これを受けて大国主神は、御子である事代主神(コトシロヌシ)と建御名方神(タケミナカタ)の意向を尋ねます。事代主神はすぐさま譲渡を受諾しましたが、千人引きの大岩を引っさげて現れた建御名方神は了承せず、逆に建御雷神に力比べを挑みます。
建御名方神(タケミナカタ)と建御雷神(タケミカヅチ)
建御名方神が建御雷神の手を握ろうとすると、建御雷神の手は氷柱や剣の刃に変化し、さらに建御名方神の手は、葦の若葉のように握りつぶされてしまいます。
恐れをなした建御名方神は逃げますが、建御雷之男神はこれを信濃の諏訪湖に追いつめて殺そうとします。そこで建御名方神はやむなく、父の大国主神や兄の事代主神の命に背かない、この地の外には出ない、葦原中国を天孫に譲るなどを誓い、ようやく赦されることになります。
建御名方神(タケミナカタ)と古事記の解釈
このエピソードを見ると、建御名方神(タケミナカタ)は出雲系の神のように考えられます。しかし諏訪大明神画詞(えことば)」など諏訪大社側の縁起では、建御名方神が他所よりやってきたこと、土着の神である守矢神(もりやのかみ)などと闘争して勝利したことが記されてはいますが、出雲から来た神という記述はありません。
おそらく当時東国へ支配を広げていた大和朝廷が、各地の豪族を制圧する過程を神話的に表現するものとして、建御名方神の服属譚(ふくぞくたん)をつくり、「古事記」の出雲系神話に取り組んだとのではないかと考えられます。
建御名方神(タケミナカタ)の神格
- 水神
- 農耕神
- 狩猟神
建御名方神(タケミナカタ)のご利益・神徳
- 農耕守護
- 狩猟守護
建御名方神(タケミナカタ)の別の呼び方・異称
- 建御名方富命
- 南方刀美神
建御名方神(タケミナカタ)を祀る主な神社・神宮
- 諏訪大社(長野県諏訪市)
- 各地の諏訪神社
建御名方神(タケミナカタ)と関わりが深い神々
建御名方神(タケミナカタ)は国譲り神話などを中心に、特に建御雷神(タケミカヅチ)などとのかかわりが深くあります。
ほかにも
など、あわせてご覧ください。