神社の境内には、社殿のような建物ほかにも、多くの物があります。それらは、以下のような種類に分けることができます。
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聖地の表示
鳥居(とりい)
神社で、まず目に入るのは「鳥居(とりい)」です。鳥居は、そこから内部が神聖な場所であることを示しており、神社以外にも建てられることがあります。
小規模な神社では、鳥居が境内の入り口に一基建っているだけですが、境内の広い神社や長い参道をもつ神社の場合では、参道の入り口から境内に向けて複数の鳥居が建てられています。
この場合、神社の一番外側に立つ鳥居を「一の鳥居」といい、本殿(ほんでん)に近づくごとに「二の鳥居」「三の鳥居」と呼ばれることが多いです。
幟(のぼり)
鳥居のほかに、神社名などの文字を記した大きな「幟(のぼり)」が入り口に立てられている神社もあります。幟は、多くは祭りの時に立てられますが、その場所が神祭りの場であることの目印としての意味をもっています。それは本来、人に対する目印というよりは、祭りの場に招かれる神に対しての目印であったと考えられています。
狛犬(こまいぬ)
また「狛犬(こまいぬ)」も、そこから中は神聖な場所であることを示すもので、穢れた者、邪悪なものの入るのを防ぐ宗教的な役割を担っています。
脱日常・聖化の仕掛け
鳥居をくぐり境内に入ると、そこは人間の領域ではなく神の領域となります。参詣人は、境内に入ると必ず、日常の自分とは違う自分になることを求められます。そうしなければ、神に近づくことができないのです。
そのための場所として、境内入り口付近には、水で身を清める「手水舎(てみずや)」があります。しかし、手水舎だけが日常から脱する施設ではありません。
太鼓橋(たいこばし)・神橋(しんきょう)
神社によっては、境内の入り口に川や水路があり、それを渡って境内に入るようになっています。この川や水路は人間の領域と神の領域との境界線で、渡ること自体に日常からの離脱する、という意味があります。
だからこそ「太鼓橋(たいこばし)」※神橋(しんきょう) などと呼ばれる半円形に極端に反った形の橋が作られ、単に川を渡るのではないことを示しているのです。
ご神木(しんぼく)と影向石(ようごういし)
境内に入ると、注連縄(しめなわ)が張られた神聖な木や石、場所を目にすることがあります。それらは「神木」や「影向石」などと呼ばれ、神霊が宿ると信じられています。「神木」や「影向石」は神に関係深いものとされ、他の木や石とは異なり神聖視されているのです。
木や石などの自然物が神聖視される基底には、神は祭りの時に一時的に何らかのものや場所に依りついて祭られるという考え方があるからです。
神が依りつくものを、一般に「依代(よりしろ)」と呼び、御幣(ごへい)や鏡・榊(さかき)が多く用いられます。それ以外にも、普通とは異なる特徴的な形状をした木や石、巨木や巨石などが神木や影向石(ようごういし)として選ばれることも、古くから行われてきました。
とくに石の場合、そこに神を迎えて祭りを行っていました。いわゆる祭祀遺跡の一つである「磐座(いわくら)」が、その役割を終えた後まで神聖視されて残ったケースも多くあります。
また神木の場合は、祭神や神社の由緒との関わりを伝える例も多くあります。近江八景(おうみはっけい)で知られる唐崎(からさき)神社の「唐崎の松」や大阪の住吉(すみよし)大社の「影向(ようごう)の松」、伏見稲荷(ふしみいなり)大社と大神(おおみわ)神社の「験(しるし)の杉」、太宰府天満宮(だざいふてんまんぐう)の「飛び梅」などが有名です。
奉納物
神に祈願する人、あるいは願い事が叶って感謝する人、それらの人々が奉納したものを境内では「奉納物」として目にすることができます。
もっともよく目につくのは、祈願(きがん)の「絵馬(えま)」です。かつては祈願の内容に関係した絵などを描いて、時に関係者の連名で畳一枚分はあるような大絵馬を奉納するようなことも行われていましたが、最近ではあまり行われなくなりました。
圧倒的に多いのは小絵馬で、受験の成功や病気平癒、恋の成就など、それぞれに願い事を書いて所定の場所に吊るして、神に願いを託します。
小絵馬の図柄も、かつては祈願内容がすぐにわかるものが多かったですが、現在ではその神社独自の図柄やその年の干支(えと)などが描かれたものが、普通になりました。
奉納物の中には、子育て祈願の乳房の作りもの、船舶の安全を願う船の模型など、願い事に関わるものを奉納します。祈願または祈願成就のお礼をする例もあります。
また、伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)をはじめとする各地の稲荷神社では、祈願する時または祈願成就に際して、朱色の鳥居や小型の鳥居と狐を奉納します。このように特定神社に特有の奉納物もあります。
また、とくに祈願に関係なく奉納されるものもあります。
もと氏子(うじこ)など、その神社と何らかの関わりを持つ人が功なり名を遂げた時などに、感謝の気持ちを込めて境内に石灯籠(いしどうろう)や狛犬を建立し、その名を残すこともあります。
共同体の記憶
神社の境内には、鎮座(ちんざ)地の共同体(コミュニティ)の歴史に関わる石碑などが建てられることもあります。
これは、神社が本来、個人の信仰や祈願の場ではなく、共同体(コミュニティ)に関わる祭りの場であったことが理由です。祭りをとおして共同体が一つにまとまることが、実は、神社のもっとも主要な役割だといえるのです。なので、共同体に生じた歴史的な出来事を記憶するための記念碑などが、神社境内に建てられているのです。
自然災害、戦争、大規模な区画整理など、共同体の生活に大きな変化を生じさせた出来事の顛末(てんまつ)を刻み込んだり、犠牲になった人々への慰霊を目的とした石碑などが、境内の片隅に立っている神社は多くあります。
祭り関係のもの
祭りの場としての神社には、当然、祭り関係のものを見ることができます。たとえば相撲の土俵などがあります。しかし、祭り関係のものを祭りの日以外に見ることは、多くはありません。
それは、祭りに用いられるものは、祭り直前にそのたびごとに作られるからです。
たとえば山車(だし)は解体されて山車庫にしまわれ、神輿(みこし)飾り金具や担(かつ)ぎ棒などを取り外して神輿庫(しんよこ)に収納しておくのが普通でなのです。
祭りの世界は、祭りの日にだけ毎回新たに、しかし毎回同じ形で作られるものなのです。そして、この毎回同じだけど毎回新しいという、一見矛盾することが、実は祭りのたびに不変の原点に立ち返り生命力が新たになるという、神道の基本的な生命観を示しているのです。
境内のほかにもっと神社について知りたい人は
ここまでは、神社の境内にあるさまざまな物について説明してきました。続いては神社にある鳥居について、「Q.鳥居にはどんな意味があるの?」をご覧ください。
もっといろいろ知りたい方は、下記リンクから神社についての知りたいページをご覧ください。