音楽に踊りに演劇と、世の中にはさまざまなジャンルの芸能があります。それら芸能は本来、宗教、とくに祭りの場で生まれてきた文化が多くあります。このページでは特に神楽について深く説明しています。
神楽ってなに?
神楽は、芸能の基本的な姿を、現在にまで伝えているといえるでしょう。神楽というと祭りのにぎわいに花を添える奉納芸と思われがちですが、その本来の意味は、神の出現にあります。
神の出現の姿を現す「神楽」
全国にはさまざまな神楽がありますが、どの神楽でも必ず、舞人たちは手に鈴や御幣(ごへい)・扇・剣など何かしらの物を持っています。これらは一般に「採り物(とりもの)」と呼ばれています。採り物は単なる舞の装飾ではなく、そこに神が一時的に依り憑くための依代(よりしろ)なのです。
神楽の語源は「かみくら(神座)」だと考えられています。神座は、依代である採り物とそれを持つ舞人を指す言葉でした。つまり、神楽とは神の出現の姿を表すもので、神楽を行うこと自体が、神祭りなのです。
その原型的姿を残すものに、中国地方の大元神楽(おおもとかぐら)や京都市の太田神社のご祈祷で見られる巫女舞など、神がかりの要素をもつ神楽が多くあります。
祭りそのものである神楽
一方で各地の神楽には、神がかりはなくとも、神楽が祭りそのものである例も多く見られます。
そもそも祭りは、基本的に神迎え・神遊び・神送りの三段から構成されています。神迎え・神送りの厳粛さと、神と人とがともに楽しくひと時を過ごす神遊びのにぎやかさの、大きく二つの側面をもっているのです。
この二つの側面に対応するように、神楽にも、仮面を着けないで厳かに神を招来する神事舞と、仮面を着けてにぎやかに演じる仮面劇や仮面舞があり、両者のセットで成り立っている神楽も多くあります。
神事舞と仮面劇・仮面舞とがセットになった神楽は、以下のようなものがあります。
- 大音響や鮮やかな光線を駆使した演出で知られる岡山県の備中神楽
- 神楽団の競い合いで観客動員を増している広島県の備後神楽
- 神話の里の夜神楽として著名な宮崎県の高千穂(たかちほ)神楽をはじめとする記紀神話を題材にした仮面劇を見せる神楽
- 狐やおかめ・ひょっとこなども出て軽妙で滑稽な無言劇を演じる江戸や相模の里神楽(さとかぐら)
- 能の演目も取り入れるとともに山伏(やまぶし)の法力を示す場面も盛り込んだ東北地方の山伏系の神楽
- ストーリー性は希薄だが次々と神々が舞い込んでは人々と交わる奥三河・南信濃地方の花祭りや霜月祭り
いずれも、神楽自体が祭りになっています。そして人々は、その土地の神楽で神々と出会うことで、日々を生きる力を新たにするのです。
雅楽ってなに?
雅楽は、神社音楽のように思われがちですが、実は違います。土着的な神楽とは違い、古代に中国や朝鮮半島・ベトナムあたりから入ってきた音楽をもとに編成された「宮廷儀礼音楽」です。
本来は舞楽(ぶがく)という舞踏に伴う音楽で、大宝元年(701年)に雅楽寮が設置されてから現在の宮内庁楽部に至るまで、基本的には宮廷が管理して受け継いでいます。そして国分寺や一宮の祭りでも演じられてきました。
外来の音楽である雅楽は、神楽とは違って神祭りを荘厳する音楽という意味合いが濃くあります。
ほかに神社について知りたい方は
ここまではお神楽と雅楽について、特に神道に関わりが深い神楽について説明してきました。続いては、家やお店でよく見られる神棚について、「Q.神棚(かみだな)とは?」をご覧ください。
ほかにもっと知りたい方は、下記リンクから神社についての知りたいページをご覧ください。