須佐之男命(スサノオ)は悪逆非道な行いによって高天原を追放された後、勇猛な善神に変じて出雲国を治めた神です。素盞嗚尊、建速須佐之男命、神素盞嗚尊、須佐乃袁尊、神須佐能袁命、須佐能乎命牛頭天王、祇園様、天王様なども呼ばれます。
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須佐之男命(スサノオ)とは
古事記では須佐之男命(スサノオノミコト)建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)、日本書紀では素盞嗚尊(スサノオノミコト)神素盞嗚尊(カムスサノオノミコト)と表記されています。
須佐之男命(スサノオ)の神名の由来
神名にある「建」も「速」も、勇猛さを意味します。また、「スサ」は荒ぶ(すさぶ)、凄まじい(すさまじい)などに通じる言葉で、その名の通り、猛々しい神として知られています。記紀神話を通じて、きわめて登場回数の多い神ですが、その性格は複雑で多岐にわたっています。
未完成な神・須佐之男命(スサノオ)
伊邪那岐神(イザナギ)が黄泉国から戻って禊をした際に、鼻をすすいだときに生まれたと古事記には記されています。
日本書紀の一書(異伝)によれば、伊弉諾(イザナギ)と伊弉冉(イザナミ)の正式な神婚が成立する前に、水蛭子(ヒルコ)に続いて素盞嗚尊が生まれたとあります。このことから推測できるのは、須佐之男命という存在が、未完成な部分を秘めた神だということです。
悪逆非道のふるまいから、善神への変容
須佐之男命は伊邪那岐神の禊によって生まれ、海原の統治を命じられますが、一向にその命を守らないばかりか、いつまでも母恋しさに泣き叫びます。それから高天原の天照大御神(アマテラス)を訪ねるますが、そこでも悪逆非道の限りをつくしたので、高天原の神々から爪を剥がされ、髭を抜かれて追放されてしまいます。
このあまりにも過酷な試練をへて、須佐之男命はたちまち善神に変容し、八俣大蛇(やまたのおろち)を鎮め、出雲国、つまり葦原中国(あしはらのなかつくに)を治めるようになります。
変容に対する解釈
この変貌ぶりについて江戸時代の国学者・本居宣長は、須佐之男命の悪性は父神である伊邪那岐神の禊が不完全であったことに起因していると考えました。そのときに残された穢れが、爪や髭を抜かれたことと高天原からの追放によって祓われ、プラスのパワーだけが強調されるようになった、と解釈しています。
また平田篤胤(あつたね)は、荒霊(あらみたま)※荒ぶる荒んだ(すさんだ)心 と和霊(にぎみたま)※穏やかな心善心 とが、極端に発現したにすぎないと考えました。
荒ぶる神として信仰が広がった須佐之男命(スサノオ)
いずれにしてもこの荒ぶる神としての属性が、そのまま強大な神威とされ、中世には武塔神(むとうしん)や牛頭天王(ごずてんのう)といった行疫神(ぎょうえきしん)と習合します。そして、十世紀より始まった祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)以後は、疫病を鎮める疫神として全国で信仰されることになりました。
須佐之男命(スサノオ)の神格
- 農業の神
- 穀物の神
須佐之男命(スサノオ)のご利益・神徳
- 五穀豊穣
- 厄よけ開運
- 縁結び
須佐之男命(スサノオ)の別の呼び方・異称
- 建速須佐之男
- 素盞嗚尊
- 神素盞嗚尊
須佐之男命(スサノオ)を祀る主な神社・神宮
須佐之男命(スサノオ)と関わりが深い神々
須佐之男命(スサノオ)は神話の中でとても多くの場面に登場し、多くの神々と関わります。ここでは代表的な神々を紹介します。
- 伊邪那岐(イザナギ)
- 水蛭子神(ヒルコノカミ)
- 天照大御神(アマテラスオオミカミ)
- 月読命(ツクヨミノミコト)
- 櫛名田比売(クシナダヒメ)
- 大国主神(オオクニヌシ)
- 大山津見神(オオヤマツミ)
- 大宜都比売神(オオゲツヒメ・おおげつひめ)
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