大宜都比売神(オオゲツヒメ)は、須佐之男命に殺され、その後の人類に五穀の種子をもたらした豊穣の女神です。保食神、大宜都比売、大気都比売神、大宜津比売神、大気津比売神などとも記されます。
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大宜都比売神(オオゲツヒメ)とは
大宜都比売神(おおげつひめ)の由来
大宜都比売神は、国土と八百万(やおよろず)の神を生んだ伊邪那岐命(イザナギ)と伊邪那美命(イザナミ)の子です。
保食神(うけもちのかみ)とも呼ばれ、食物をつかさどる神として知られています。また、その性質から、のちに登場する豊宇気毘売神(トヨウケヒメノカミ)、あるいは須佐之男命(スサノオ)の子である宇迦之御魂神(ウカノミタマ)と同神とも考えられています。
スサノオに殺されてしまう大宜都比売神
大宜都比売神は、須佐之男命(スサノオ)が自らの狼藉の罪によって高天原を追放された直後に登場します。そのエピソードは、話の流れとしては唐突で、別の伝承が入ってきたのではないかとも言われています。
高天原を追放された須佐之男命は、食物を求めて、姉神である大宜都比売神(オオゲツヒメ)のもとに立ち寄った。大宜都比売神はこのとき、自らの鼻や口、はては尻などからさまざまな食物を出して須佐之男命をもてなした。だが須佐之男命は、その行為を汚らしいと怒り、姉神を斬り殺してしまった。
すると、その死体からは稲、粟、麦、小豆や大豆などが生えた。これを五穀の始まりとする。その後、これらの種子は、神産巣日神(かみむすび)によって国中に広められた。
このように、死から豊かな実りが生じるという考え方は、世界各国の神話に見ることができます。
死から生まれる大地母神
たとえば、娘のペルセポネを求めて冥府へ下っていったギリシア神話の豊穣の女神・デメテルがそうです。あるいは、大地の奥底に押し込められた自らの子供たちを救うために、末っ子のクロノスに命じて、夫のウラノスの陽物を切り落とさせた女神ガイヤ。ヒンドゥー神話におけるカーリー女神やドゥルガー女神も同じように考えることができます。
これらはいわゆる原始母系制とも連関する大地母神(だいちぼしん)の神話になります。
自然の循環を司る大宜都比売神(オオゲツヒメ)
これはそのまま大自然の営(いとな)みを表すものです。たとえば四季に例をとれば、植物が枯れ果てる冬は、すべてが死に絶えた世界であるかのように見えます。
しかし生命は、荒涼とした大地のなかで息づいており、厳しい冬ののちには必ず春が訪れ、夏を経て、秋にはまた豊かな実りに恵まれるのです。
大宜都比売神も、破壊と再生という大自然の循環をつかさどる女神だと考えられます。
大宜都比売神(おおげつひめ)の神格
- 農業の神
- 食物の神
大宜都比売神(おおげつひめ)のご利益・神徳
- 農業守護
- 漁業守護
- 養蚕守護
大宜都比売神(おおげつひめ)の別の呼び方・異称
- 保食神
- 大気津比売神
大宜都比売神(おおげつひめ)を祀る主な神社・神宮
大宜都比売神と関わりが深い神々
大宜都比売神(オオゲツヒメ)は死と豊穣の相反する二面に関わる神として、関わりが深い神々がいます。
中でも一番関わりが深いのは須佐之男命(スサノオ)でしょう。