天之常立神(アメノトコタチ)は、天地が分かれたのち、天の礎が定まったことを示す神。別天津神五柱の最後に現れた神です。天常立神、天常立尊と称されることもあります。
天之常立神とは
天之常立神(アメノトコタチ)は、天地創成・天地開闢神話に現れる神です。古事記では天之常立神、日本書紀では天常立尊(アメノトコタチ)と表記されます。配偶神はいませんが、表記上では国之常立神(クニノトコタチ)と対をなす神です。
古事記では、天之御中主神(アメノミナカヌシ)以下の別天神(ことあまつかみ)五柱のうち、宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコジ)に続いて最後に出現した神で、国之常立神以下、伊邪那岐神(イザナギ)・伊邪那美神(イザナミ)までの神代七代(かみのよななよ)への続く位置に登場します。
宇摩志阿斯訶備比古遅神と同じく、国・大地が浮き脂のように漂っていたとき「葦牙(あしかび)の如く萌え騰がる物に因りて成りませる神」と記されています。具体的な事跡は語られることなく、他の別天神五柱と同じく、配偶神をもたない独神(ひとりがみ)として身を隠します。
日本書紀、神代上・第一段、第六の一書(異伝)では、天地が分かれて最初に現れた始原の三神のうちの第一の神として記され、そこには「葦牙のように空中に生まれた神」と記されています。なお「先代旧事本紀(せんだいくじほんぎ)」では、天之御中主神と天之常立神をおなじ神として見ています。
「天・アメ」は、神々の住む世界としてのイメージされた高天原で、現実に人間が見上げる天空としての宇宙でもあります。トコ(常)は存在や状況の恒久性・永遠性を、タチ(立)は「風が立つ」というように、それまでははっきり見えなかったものの出現を意味します。よって神名は、天(高天原)が永久に存立するような状況が出現した、との意味になります。トコを「床」としてより限定的に考えて、天之常立神を具体的な意味での「天の土台」とする見解もあります。
古事記では、天之常立神に続いて宇摩志阿斯訶備比古遅神が「萌え騰がる物」から出現します。この記述に沿って考えると、天地開闢以降いまだ分化途上で流動浮遊していた天地のうちの天(高天原)が、国・大地から萌えあがる豊かな生成力・生命力である宇摩志阿斯訶備比古遅神によって、「天の礎」として一旦安定するに至った状態を神格化したものでると考えることができます。
天之常立神の神格
- 天を支える霊力
- 天の土台の神
天之常立神のご利益・神徳
- 産業開発
- 必勝祈願
- 交通安全
天之常立神の別の呼び方・異称
- 天常立神
- 天常立尊