宇比地彌神(ウイジニ)・須比智彌神(スイジニ)とは、国生みの舞台となる豊かな大地の始源の姿を示し、神世七代で初めて男女一対として登場した神です。
宇比地彌神・須比智彌神とは
古事記においては神代七代(かみのよななよ)の神であり、配偶神をもたない国之常立神(クニノトコタチ)、豊雲野神(トヨクモノ)に続く三代目の神です。
この宇比地彌神(ウイジニ)・須比智彌神(スイジニ)、角杙神(ツノグイ)・生杙神(イクグイ)、意富斗之地神(オオトノジ)・大斗乃弁神(オオトノベ)、於母陀流神(オモダル)・阿夜訶志古泥神(アヤカシコネ)、伊邪那岐神(イザナギ)・伊邪那美神(イザナミ)までの五代十神は配偶神であり、二神一対で一代と考えます。
また、一対のうち後者には女性を示す妹(いも)という表記がつくので、男女で一対の神となります。よって宇比地彌神は男神、須比智彌神は女神と考えられるのです。
日本書紀では、神代上・第二段の本文・一書(異伝)で泥土煮尊(ウイジニ)、沙土煮尊(スイジニ)と表記されています。
神代七代の部分では、天地開闢から「天の礎」の確立(天常立神)を記す別天神五柱(ことあまつかみ)の記述があり、その後「国の礎」の成立(国常立神)から国生みを行う伊邪那岐・伊邪那美二神の登場までを記しています。
豊雲野神二神より前の神々が、みな独神(ひとりがみ)で身を隠したのに対して、これ以降の神々は身を隠したという記述がありません。つまり宇比地彌神・須比智彌神から伊邪那岐神・伊邪那彌神までの神々は、国で顕在的に働く神格だといえます。
とすれば、国之常立神。豊雲野神が、潜在化して裏から国を支える生成力であるのに対して、宇比地彌神・須比智彌神から於母陀流神・阿夜訶志古泥神までの四組八神は、伊邪那岐命(イザナギ)・伊邪那美命(イザナミ)による国生みの条件が整えられるまで、またそれ以降も、国全体・大地全体に顕在的に働く生成力を神格化した存在ということになります。
宇比地彌神・須比智彌神の神名にあるヒヂ(比地・比智)は泥、ス(須)は砂を意味することから、この二神が、水分を多く含んだ泥土(でいど)・泥砂(でいさ)を表象する神々であることがわかります。
神話的には、葦原(あしはら)など水分を多くふくむ土地は植物の生長を保障する豊かな土地を意味していました。伊邪那岐命・伊邪那美命による「国生み」の前提となる豊かな大地の始源の姿にふさわしいといえるでしょう。
宇比地彌神・須比智彌神の神格
- 泥土(泥砂)の神
- 泥土にふくまれる生成力・生命力
宇比地彌神・須比智彌神のご利益・神徳
- 五穀豊穣
- 開運招福
- 生産増大