和久産巣日神(わくむすび)は、イザナミによる神生みの最後に生まれ、後に豊受大神を生んだ、自然を育てる若々しい生成の力を神格化した存在です。稚産霊、わくむすひなどとも称されます。
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和久産巣日神(わくむすび)とは
和久産巣日神は、古事記では、伊邪那岐命(イザナギ)・伊邪那美命(イザナミ)の二柱による国生み・神生みの最後に誕生した神として記されています。伊邪那美命が火神・火之迦具土神(ヒノカグツチ)に陰部を焼かれ、病みふしたときの尿から成った二柱の水神のうち、弥都波能売神(みつはのめのかみ)に続いて出現した神です。
和久産巣日神(わくむすひ)の神名の由来
ワクは「若々しい」、「ムスヒ」は高御産巣日神(たかみむすび)、神産巣日神(かみむすび)の「産巣日」と同じく、生成の霊力を意味します。水が持っている、自然物を育てる旺盛な若々しい生成の力を、神格化した存在であることがわかります。
だからこそ、水神・和久産巣日神は農耕で豊穣をもたらす生産の神・農耕神でもあります。伊邪那美命の尿から和久産巣日神が出現したように、和久産巣日神は農耕に有益な肥料のイメージとも結びついているのです。
このことは、和久産巣日神が、伊勢神宮の外宮の祭神で生産神・食物神として名高い豊宇気毘売神・豊受大御神(トヨウケ)の母神であることにもうまく繋がっています。
日本書紀での稚産霊(わくむすび)
日本書紀、神代下・第五段、第二の一書(異伝)では、稚産霊(わくむすひ)の名前で登場します。古事記とは少し話が違っています。
日本書紀では、まず伊弉冉尊(イザナミ)が火神・軻遇突智(カグツチ)に身を焼かれ、苦しみながらも土神・埴山姫(ハニヤマヒメ)と水神・罔象女(ミツハノメ)を生みます。そして軻遇突智(カグツチ)がこの埴山姫を娶って生まれた子が、稚産霊(ワクムスビ)であると記されています。
古事記との違い|農耕と生産の神
神名のワカ(稚)はワク(和久)と同じく「若々しい」という意味で、ムスヒ(産霊)は産巣日と同じ意味なので、稚産霊もまた、旺盛な生成力を意味します。
しかし、稚産霊には和久産巣日神のように、尿など水をイメージするものから成ったわけでも、水神であると明記されているわけでもありません。稚産霊の頭から蚕と桑が、その臍からは五穀が生じたという日本書紀の記述を見ると、稚産霊はむしろ、和久産巣日神から水神の性格を取り除き、農耕神・生産神の側面を強調した神格のようにも見えます。
また、火神と土神の婚姻から稚産霊が生まれたという表現に、火と土との結合による生産=焼畑(やきはた)農耕の起源を読みとる説などもあります。
和久産巣日神(わくむすび)の神格
- 水神
- 農耕神
和久産巣日神(わくむすび)のご利益・神徳
- 農耕守護
- 祈雨・止雨
和久産巣日神(わくむすび)の別の呼び方・異称
- 稚産霊
和久産巣日神(わくむすび)を祀る主な神社・神宮
和久産巣日神(わくむすび)と関わりが深い神々
和久産巣日神(わくむすび)は、豊受大神(トヨウケ)を生んだことが大きな特徴といえるでしょう。
ほかにも和久産巣日神とつながりが深い代表的な神々を紹介します。
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