奈良時代より関東屈指の山岳霊場としてその名を轟かせる「箱根三所権現(はこねさんしょごんげん)」
箱根三所権現とは
霊峰富士にほど近く、中央火口丘とそれを取り囲む外輪山からなり、その内に芦ノ湖をたたえた箱根山。日本有数の景観を誇る箱根の最高峰は、その名も神山(かみやま)といい、南にはロープウェイが通じている駒ヶ岳が頂を結んでいます。
駒ヶ岳山頂には現在、箱根神社元宮が鎮座しています。そこには元宮にふさわしく、古代の祭場であったことを示す磐座が残されている。
社伝によれば、紀元前の人皇・第五代孝昭天皇の御代、聖占上人(しょうせんしょうにん)が駒ヶ岳にて神山を神体山として神祭りを行ったと伝えられています。
箱根神社の伝説には続きがあります。奈良時代に諸国の社寺伝説に名を残す謎多き修行僧、万巻上人(まんがんしょうにん)がこの地を訪れ、芦ノ湖畔にて難行苦行を修しました。すると万巻のもとに三人の異形の者が現れ、こう告げます。
「我等三人はこの山の主なり」「三人ともにここに住まい、有情と結縁し、成仏せしめたい」
上人はそれに応え、現在の境内地に里宮を創建し、感得した法体である僧形神・俗体である男神・女体である女神の三神を箱根三所権現として祀ったといいます。また、芦ノ湖にすまう悪龍を鎮めたとも伝わっています。
由緒書を読む限り、箱根三所権現は先行する神山と駒ヶ岳の神である能善権現・駒形権現とも異なり、日光のように特定の山に依拠する神ではなかったようです。
中世の縁起には、三神はインドのとある国から飛来した大臣と娘、その夫だと書かれていますが、現在祀られている三柱の祭神は、記紀神話由来の親子神となっています。
箱根は、万巻の時代から関東屈指の山岳霊場として知られた存在でした。平安時代の末には、石橋山の合戦に敗れた源頼朝を当社の別当が助けた(『吾妻鏡』)ことから、箱根権現は以後、東国の武家から守護神として崇められるようになります。
さらに江戸時代になると、東西交通の要に位置することから道中安全の祈願所となり、庶民信仰の聖地へと変貌していくのです。
箱根三所権現の神格
- 箱根山(神奈川県)の守護神
箱根三所権現のご利益・神徳
- 交通安全
- 心願成就
- 開運厄除
箱根三所権現の別の呼び方・異称
- 箱根権現
- 箱根三社権現
箱根三所権現を祀る主な神社・神宮
箱根三所権現をお祀りする最も有名な神社は神奈川県足柄下郡に鎮座する箱根神社です。
自然の山々や霊山の神々
箱根三所権現のほかにも自然の山々の神様は多く祀られています。霊山・霊峰の神々を紹介します。