天狗の三尺坊と同一視される、火伏せに霊験あらたかな神「秋葉大権現(あきばだいごんげん)」
秋葉大権現とは
秋葉大権現が祀られる静岡県西部・遠州地方の中心にそびえる秋葉山は、御神体の山にふさわしく山頂と山麓に社殿が構えられています。かつて秋葉詣の人々はみな、うっそうとした老樹に囲まれた参道の急坂を踏みしめ、はるか頂に鎮座するお社を目指しました。秋葉神社上社、本殿前からの眺望は、昔も今も東海一の絶景と称えられる景色です。
当社の草創年代は明らかになっていません。社伝によれば、和銅二年7(709年)が社殿開創の年となっていて、史料のうえでは『三代実録』貞観十六年の条に記された「岐陛保神(きへのほのかみ)ノ社」が当社に比定されていて、歴史上の初出と考えられます。「岐陛」は秋葉の古語で、「保神」は火の神を意味します。
この「山の火の神」が意味するものは何なのでしょうか。当社の祭神で、記紀神話に登場する火神カグツチは、記紀神話では母神イザナギをも焼き殺す負の力と、水や山の神々を次々と生み出す生の力の両面を体現します。
カグツチの両義性は、焼畑農耕の信仰を背景にしたという説があります。もしそうだとすると、その信仰は水稲(すいとう)栽培以前の古い記憶にさかのぼるものといえそうです。
しかし文明の発展は、火の力をあらわす神より火を防御する守護神を求める方向へ変わっていきます。とくに江戸時代、「あなたふと(なんて尊い)、秋葉の山にまし坐(ま)せる、この日の本の火防(ひふせ)ぎの神」(伝元正天皇御製)と称えられる秋葉大権現の神徳によって、当社は絶大な崇敬を集めることになります。
秋葉大権現と同一視され、秋葉山の守護神として知られるのが、天狗の三尺坊(さんじゃくぼう)です。三尺坊は、もとは戸隠で修行し、ついで越後の道場で荒行をしたのち秋葉山に来山します。神通不思議の妙力を得て、生身のまま天狗となって白狐にまたがり、飛行昇天したといわれています。
秋葉神社といえば十二月に行われる「秋葉の火まつり」が有名です。その最大の見せ場である火の舞は、秋葉三尺坊が具現したという火伏せの能力を彷彿とさせます。
秋葉大権現の神格
- 秋葉山(静岡県)の守護神
秋葉大権現のご利益・神徳
- 火災消除
- 家内安全
- 厄除開運
秋葉大権現の別の呼び方・異称
- 秋葉三尺坊大権現
秋葉大権現を祀る主な神社・神宮
秋葉大権現をお祀りする有名な神社は静岡県浜松市に鎮座する秋葉神社でしょう。
自然の山々や霊山の神々
秋葉大権現のほかにも自然の山々の神様は多く祀られています。霊山・霊峰の神々を紹介します。